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問 題 点

※ このページに使用している写真については、大部分が他のページからお借りしているものです。ほとんどの写真は転載許可をいただいておりますが、一部ご連絡が取れなっかった為に許可を得ずに掲載しているものもあります。もしこのページをご覧になった方で、問題のある写真を見つけた場合には、弊社までご連絡して頂きますよう、お願い申し上げます。

1)視覚障害者誘導用標示自体の問題点

● 雨の日に滑る
視覚障害者誘導用標示の素材の表面がツルツルとした状態のものである場合、雨天時の雨等によって視覚障害者誘導用標示が滑りやすいものになることが、最近問題視されています。実際年に多くの転倒事故が報告されており、これには歩行者と自転車が含まれています。 最近では表面にすべり止めを施した素材を使用したものが採用されています。

● 視認性
なぜ黄色いか?」のページでも取り上げましたが、現状の視覚障害者誘導用標示の問題点として、弱視者による視認性の問題が上がっています(NITE(財団法人 製品評価技術基盤機構)による調査、以下NITE)。JIS規格のT9251-2001版では突起の形状・寸法及び配列に関しては規定されていますが、視認性に関しては未制定です。現在(2006年11月時点)は、ISO/TC173/WG7「歩行者領域における視覚障害者誘導のための設備と方法」にて「視認性への配慮」としてブロック等のコントラストを規定する予定であるそうです。
インターロッキングの模様と一体化されたブロック。分かり難い
タイル状の床と一体化し、さらに誘導ラインが段違いにつながっている
色の異なるブロックが排水溝を挟んで続いている。又、黄色のブロックでさえも、輝度では見えにくくなっている
一見、どこにブロックがあるのか分からない
ある施設の設置例。輝度で見るとおわかりのように弱視者には分かりづらい
周りの色と同色のため、とても分かり難い
これもある施設の設置例。輝度で見るとおわかりのように床に模様があるため、余計に分かり難くしている
同じグレーでも、周りの輝度が低いため、まだ識別が可能な例

● 車いすの走行阻害
一部、車いすの走行性に問題があるとの指摘もあり(NITE調査)、NITEでは今後データを収集し、JIS及びISOの標準化に反映させていく予定とのことです。(平成17年度標準化関係業務「視覚障害者誘導用ブロック等の視認性等に係る標準化」に係る委託先の公募について)

● 舗装構造体への悪影響
視覚障害者誘導用ブロックの場合、舗装面を切削して、ブロックを埋め込むため、舗装自体の強度・耐久性が弱まり、舗装の寿命を縮めてしまうという問題があります。特に寒冷地では、冬期間の凍上によって、切削面の割れや拡大等が起こりやすくなります。そのため最近は舗装表面に貼り付けるタイプの視覚障害者誘導用標示が増えてきています。

● 視覚障害者誘導用標示の強度不足
寒冷地、特に雪の多い東北、北海道では歩道上に除雪車が入るため、除雪車両によって視覚障害者誘導用標示を破損してしまうという問題があります(主に突起部)。春の雪解けと共に早急に補修できればいいのですが、全ての補修には時間がかかるため、視覚障害者誘導用標示の重要なポイントの一つである「突起」が欠けた状態がしばらく続いてしまう場合があります。
破損した誘導ブロック
破損した誘導ブロック

2)街中の危険(設置方法に関わる問題点)

 JIS規格によって視覚障害者誘導用標示の突起の形状や配列は規定されましたが、設置方法や色についてはまだ未制定です。自治体や施設も様々な工夫を凝らしているようですが、全国統一されたガイドラインというものがまだ完成段階にはなく、様々な団体で研究が進められています。またバリアフリーやユニバーサルデザインもまだまだ導入時期にあり、全ての人に優しい街づくりは始まったばかりです。

 それを踏まえた上で現状の問題点を幾つかあげてみたいと思います。こういった問題箇所はすぐに全てを直すというわけにはいかないのかもしれませんが、今後の留意点として知っておく必要はあると思います。(※注 掲載した写真の中にはすでに直っている箇所もあります)

● 途中でとぎれた誘導ブロック
理由はさまざまですが、誘導ブロックが途中でとぎれてしまっているところがたまにあります。目の見える人にはその先にまた誘導ブロックが続いていることがわかりますが、全盲者は、はたして道がそこで終わっているのか、真っすく進むべきなのかまるで分からなくなることがあるそうです。
途中でとぎれてなおかつ段差がある
これも水路の蓋によって途中でとぎれ、また段差もついている
横断歩道を渡った先には誘導標示が無くなっている
マンホールの蓋でとぎれている。輝度でみると、ラインも分かり難い。ブロックが黄色でも輝度比がないと弱視者に対しても識別し難くくなっている
マンホール上にも誘導ブロックを設置出来ている例。ただし、こうしたマンホールの凹凸はつまずきの原因にもなる

● 迂回する誘導ブロック
誘導ブロックが迂回しています。前方に電柱や柱などの障害物があり、それをさけるためと思われる設置方法をした場所がたまにあります。迂回方法にもいろいろありますが、急激な迂回は、全盲者に方向感覚を失わせてしまったり、突然誘導ブロックが無くなったかのような錯覚を与えてしまうことがあるそうです。
地下施設の蓋をさけている
この方法がいいとは一概には言えないが、比較のために提示した

● ドアや壁ぎりぎりまで接近した視覚障害者誘導用標示
ドアの直前まで警告ブロックが接近していると、視覚障害者誘導用標示を足裏で感じながら歩いている人は、確実にドアに激突します。観音開きのドアの場合などは特に危険な箇所になりえます。
ドアに接近しすぎて危険
ドアから少し離して設置自動ドアの為、激突の危険は少ない
まっすぐ行くと壁に激突しかも色が分かり難い

● 誘導ブロックの上に、駐輪・看板などの障害物を置く
視覚障害者は誘導ブロック上を歩いているとき、少し気を抜いている場合があるそうです。そんなときに前方に突然障害物が置いてあった場合、確実に転倒または激突事故となり、負傷することが多いといいます。しかし、これは設置者側だけの問題とはいえず、社会のモラルが問われる問題です。

自転車でふさがれている
車で完全にふさがれている
ドアに接近しすぎて開いたドアに激突しそう
壁ぎりぎりに設置されたブロック上に荷物が置かれている
もとはドアを使用していたのが、使用不可になったのだろうか。当然ぶつかる

● 横断歩道の方向が分からない
横断歩道の手前に警告ブロックが置かれている光景は多く見かけるようになりましたが、横断歩道がはたして、どちらの方向に向かってのびているのかが、全盲者には分かり難い部分があるようです。必ずしも歩道に対して直角ににのびているとは限らない横断歩道。最近では横断歩道上にも視覚障害者誘導用標示(エスコートゾーンともいう)を設置している自治体があるようです。(視覚障害とユビキタス社会)
スクランブル交差点。視覚障害者はどの方向に向かうべきか迷いがち
横断歩道にも視覚障害者誘導用標示を設置した例。斜めに横断する場所でも方向が分かりやすい
横断歩道上の視覚障害者誘導用標示であっても車が障害となるケース

● その他
下の写真はある施設の視覚障害者誘導用標示です。誘導標示のように見えますが、使用しているのは警告ブロック(点状突起)です。ただ、この施設の場合、企画段階から視覚障害者の意見を聞いて、一番わかりやすいというものを採用したのだそうです。しかし、一般的な(JIS規格)標示方法とは異なるため、この地域以外の方からはとまどいの声も聞かれるそうです。障害者の方々の意見を聞くことは、ユニバーサルデザインの基本だと思いますが、統一感が無くてもいいのだろうか?という問題提起にはなると思います。

誘導のための設置と思われるが、全てに警告ブロックが使われている